住宅ローン返済中に転勤になっても、家族が残る単身赴任なら住宅ローン控除は続きます。家族ごと離れて家を貸すなら、借入先への届出が先。控除は離れる前に税務署へ届け出ておけば、戻った年(その年に貸していれば翌年)から残りの期間だけ受け直せます。
この記事でわかること
- 転勤で家を離れる3つの形と、それぞれのローン・控除の扱い
- 独身・親だけが住む・海外赴任のとき、単身赴任の扱いになるか
- 控除を受け直す手続きと、3年離れたときに失う控除額の目安
- 家を貸したときの確定申告と、戻る時期を確保する貸し方
出典: 国税庁 No.1234「転勤と住宅借入金等特別控除等」(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月7日に確認)
転勤で家を離れるときは3つの形に分かれる
住宅ローン返済中の転勤は、誰がその家に残るかでローンと控除の扱いが決まります。家族が残るか、家族ごと離れて家を空けるか、人に貸すかの3つです。
転勤で家を離れるときの扱い(国税庁 No.1234・フラット35一般条項集より)
| 形 | 住宅ローン控除 | 借入先への届出 | 税務署の手続き |
|---|---|---|---|
| 単身赴任(家族が残る) | 続く | 名義人が住まなくなるので相談 | 不要 |
| 家族ごと転居・空き家 | 止まる(戻れば受け直せる) | 必要 | 離れる前に届出 |
| 家族ごと転居・賃貸に出す | 止まる(戻った翌年から受け直せる場合あり) | 必要(貸してよいかの承諾) | 離れる前に届出 |
どの形でも、転勤の辞令が出たら借入先と税務署の両方に、家を離れる前に確かめておくのが順番です。
転勤が決まったら、まず「誰が残るか」
- 家に生計を一にする家族が残る?
- 1残る=単身赴任控除は続く。名義人が住まなくなることは借入先へ相談
- 2誰も残らない・空き家控除は止まる。離れる前に税務署へ届出をしておけば、戻った年から受け直せる
- 3誰も残らない・賃貸に出す貸す前に借入先の承諾が要る。戻った年に貸していれば、受け直しは翌年から
借入先と税務署の両方に、家を離れる前に確かめる
図:家に残る人で、ローンと控除の扱いが3通りに分かれる。
単身赴任で控除が続くのは「生計を一にする家族」が住むとき
単身赴任で控除が続く条件は、配偶者や子など生計を一にする親族がその家に住み続けることです。名義人が戻れば一緒に住むと認められることも、条件の1つです。
国税庁 No.1234 は、残る人を「配偶者、扶養親族その他生計を一にする親族」と書いています。この言葉で、次のような場合の線が引けます。
- 独身で転勤:家に住む家族がいないので、単身赴任の扱いにはならない
- 親だけが住む:名義人と生計を一にしている親なら、条件に当てはまりうる
- 家族も別の場所へ移る:単身赴任ではなく、家族ごとの転居として扱われる
親に住んでもらう場合は、生計を一にしているといえるかを、税務署に事情を伝えて確かめてから決めてください。
海外赴任は、取得した時期と国内の所得で分かれる
転勤先が海外でも、平成28年4月1日以後に取得した家なら、家族が住み続ければ同じ扱いを受けられます。名義人が日本の居住者でなくなっても構いません。
ただし控除できるのは、日本にいた期間の給与や出国後の国内の家賃など、総合課税の対象になる国内の所得がある年分に限られます。その所得がない年は、この扱いを受けられません。
家を賃貸に出す前に、借入先へ届け出る
住宅ローンの家を貸すときは、貸す前に借入先へ届け出て、承諾を得てからです。黙って貸すと、残りのローンを一括で返すよう求められる理由になります。
フラット35の一般条項集(ドコモSMTBネット銀行)では、次の2つが一括返済を求められる事由に挙がっています。
- 貸主に届け出ないで、その家に自分で住まなかったとき
- 貸主の承諾を得ないで、住宅以外の用途に使ったとき
住宅ローンは、本人や家族が住む家を買うためのお金です。政府の答弁書(2019年)でも、フラット35の契約書は使い道を本人か親族が住む住宅に限っていると説明されています。住宅金融支援機構は2019年5月から、不正が疑われる案件の居住実態調査を行っているとのことでした。
届け出るときに用意するもの
転勤によるやむを得ない事情だと伝わる形で相談します。
- 転勤の辞令や会社の異動通知の写し
- 離れる時期と、戻る予定の時期
- 空き家にするか、貸すか(貸すなら管理会社や家賃の見込み)
貸してよいか、住宅ローンのまま続けられるかは、借入先の判断です。条件を変える、別のローンに借り換えるなど、指示された内容を書面で受け取っておくと後で困りません。
転勤が転職と重なる場合の審査の見られ方は、転職すると住宅ローン審査に通らない?で扱いました。
控除を戻ってから受け直す手続きと、失う控除額
家族ごと離れても、転任の命令などのやむを得ない事情があり、離れる前に届出をしておけば、戻ったあと残りの期間の控除を受け直せます。
離れる前と戻ったあとにすること
控除を受け直すための手続き(国税庁 No.1234・令和8年4月1日現在)
| 時期 | すること | 出す先 |
|---|---|---|
| 家を離れる日まで | 「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を出す | 家の所在地の税務署 |
| 家を離れる日まで | 使っていない年末調整用の控除証明書(兼申告書)を返す | 同上 |
| 戻った年(または翌年)の翌春 | 確定申告で計算明細書と年末残高等証明書を付ける | 住所地の税務署 |
受け直す最初の年は、年末調整ではなく確定申告です。2年目からの年末調整の書き方は住宅ローン控除の年末調整のやり方にまとめました。
入居した年の年末までに家族ごと離れた場合は、離れる前の手続きは要りません。戻ったあとの確定申告で、転任の命令などを示す書類を付けます。
戻った年に貸していたら、受け直しは翌年から
見落としやすいのが、戻る年の扱いです。国税庁 No.1234 では、戻った年にその家を貸していた場合、受け直せるのはその翌年からとされています。
たとえば7月に戻る予定で、6月まで人に貸していたら、その年の控除は受けられません。戻る時期が決まっているなら、賃貸の終わりを年末に寄せるか、戻る年は貸さない形にすると1年分を守れます。
控除期間は延びない。3年離れると約55万円
離れていた期間のぶん、控除の13年が後ろへ延びることはありません。受け直せるのは「残りの期間」だけです。
3,000万円・年1.0%・35年で4〜6年目に離れた場合(試算)
| 年 | 年末残高の目安 | その年の控除額(残高×0.7%) |
|---|---|---|
| 4年目 | 約2,708万円 | 189,548円 |
| 5年目 | 約2,633万円 | 184,306円 |
| 6年目 | 約2,557万円 | 179,011円 |
| 合計 | — | 約55万円 |
ZEH水準省エネ住宅(令和6〜12年入居・上限24.5万円)で、税額が控除しきれる場合の目安です。戻った7年目に貸していた期間があれば、7年目の約17万円も失います。
3年離れて戻ったときの控除
- 4〜6年目
- 控除なし(約55万円)
- 7年目
- 受け直せる(約17万円)
- 控除の終わり
- 13年目のまま
- 4〜6年目
- 控除なし(約55万円)
- 7年目
- 控除なし(約17万円)
- 控除の終わり
- 13年目のまま
図:3,000万円・年1.0%・35年の試算。戻る年に貸していると、受け直しは翌年からになる。
控除額の計算そのものは住宅ローン控除でいくら戻る?で詳しく試算しています。
家を貸すと、家賃は不動産所得として申告する
家を貸して受け取る家賃は、不動産所得です。会社員でも、条件によっては確定申告が必要になります。
国税庁の案内から、押さえておきたい点を並べました。
- 所得の計算:家賃などの総収入金額から必要経費を引いた額が不動産所得(No.1370)
- 申告が要る人:給与を1か所から受けていて、給与以外の所得の合計が20万円を超える人(No.1900)
- 建物の減価償却:自宅を貸し出した場合、住んでいた期間は耐用年数の1.5倍・旧定額法で減価を計算し、残りの額から償却を始める(No.2108)
管理会社への手数料や修繕費など、経費になるものの範囲は人によって違います。初めての年は、税務署か税理士に相談してから申告すると安心です。
控除を受け直す年の確定申告の流れは、住宅ローン減税の確定申告のやり方で確かめられます。
戻る予定があるなら、期間で終わる貸し方を選ぶ
転勤から戻って住むつもりなら、期間が来たら終わる「定期建物賃貸借(定期借家)」で貸すのが安全です。
ふつうの賃貸借では、期間が来ても借りる人が住み続ければ契約は更新されます。貸す側から更新を断るには「正当の事由」が要ります(借地借家法第28条)。自分が住みたいという理由だけで認められるとは限りません。
普通借家と定期借家の違い(借地借家法 第26条・第28条・第38条)
| 項目 | 普通借家 | 定期借家 |
|---|---|---|
| 期間が来たら | 更新されるのが原則 | 更新なしで終わる |
| 貸す側から終わらせるには | 正当の事由が要る | 期間1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに終了を通知 |
| 契約の形 | 通常の賃貸借契約 | 書面(電磁的記録も可)で契約し、更新がないことを書面で説明 |
更新がないことの説明をしなかった場合、更新しない定めは無効になります。管理会社に頼む場合も、定期借家で募集してもらえるか先に確かめてください。
空き家にする場合も、確認しておくこと
貸さずに空き家にするなら、借入先への届出に加えて、次の点も見ておきます。
- 火災保険:住む人がいなくなること・貸すことを契約先に伝え、補償が続くか確かめる
- 家の手入れ:換気や郵便物の整理を誰が、どのくらいの頻度でするか決める
- 戻る時期:控除の届出と同じく、予定の時期を家族と借入先で共有しておく
よくある質問
Q1:住宅ローン返済中に転勤になったら、ローンはどうなりますか?
返済はそのまま続きます。ただし名義人が家に住まなくなるなら、借入先へ届け出る必要があります。フラット35の一般条項集では、届け出ずに住まなかったときは一括返済を求められる事由です。
Q2:転勤で住宅ローン控除はなくなりますか?
家族が残る単身赴任なら続きます。家族ごと離れると、その間は止まります。離れる前に税務署へ届出をしておけば、戻った年から残りの期間について受け直せます。
Q3:独身で転勤した場合、住宅ローン控除はどうなりますか?
家に住む家族がいないので、離れている間は受けられません。単身赴任の扱いは、生計を一にする親族が住み続けることが条件です。転任の命令で離れ、離れる前に届出をしておけば、戻ったあとに受け直せます。
Q4:転勤中に家を貸したら、銀行にバレますか?
隠して貸す前提で考えないでください。住宅金融支援機構は2019年5月から居住実態の調査を行っており、不正な利用には一括返済を求めるとしています。転勤なら、辞令を添えて先に届け出るのが正しい順番です。
Q5:戻ってからの控除は年末調整で受けられますか?
受け直す最初の年は確定申告です。計算明細書と年末残高等証明書を付けて出します。2年目からは年末調整で受けられます。
まとめ
- 転勤後の扱いは誰が家に残るかで決まる。単身赴任なら控除は続く
- 単身赴任の扱いは、生計を一にする親族が住むことが条件。独身なら対象外
- 家を貸すなら、先に借入先へ届け出て承諾を得る。黙って貸すと一括返済の事由
- 控除の受け直しは、離れる前の届出が条件。戻った年に貸していれば翌年から
- 控除期間は延びない。3,000万円・年1.0%なら3年離れて約55万円を失う
- 戻る予定があるなら、期間で終わる定期借家で貸す
辞令が出たら、借入先への連絡と税務署への届出を、家を離れる日より前の予定に入れておいてください。戻る年が決まっていれば、賃貸の終わりもそこから逆算できます。
転勤と返済計画、貸すか売るかをまとめて相談したいなら、無料FP相談おすすめ比較で相談先の選び方を整理しています。
免責事項
※本記事は国税庁・住宅金融支援機構の契約条項・衆議院の答弁書・借地借家法などの公表資料(2026年10月7日に確認)をもとに整理した一般的な解説です。控除額は金利一定・1月入居などを仮定した目安で、実際の控除の可否や金額、賃貸の可否は、家族の状況・借入先の判断・契約内容により異なります。手続きの前に借入先と税務署へご確認のうえ、必要に応じて税理士・ファイナンシャルプランナー等の専門家へご相談ください。
