住宅ローンの火災保険は、多くの金融機関で融資の条件です。フラット35は返済が終わるまで加入し続けることが条件で、補償は引き渡しの日から始めるのが基本。保険会社は銀行の紹介に限らず自分で選べますが、契約期間は最長5年なので更新を切らさないようにします。
この記事でわかること
- 住宅ローンで火災保険が求められる理由と、金融機関ごとの条件
- 火災保険にいつまでに入るか、間に合わないときの動き方
- 銀行が紹介する保険と自分で選ぶ保険の違い
- 保険金額・期間・地震保険の決め方と、質権設定と完済後の扱い
一次資料: 楽天銀行「【フラット35】商品詳細説明書」(参照)/財務省「地震保険制度の概要」(参照)/e-Gov法令検索「民法」(参照)
先に結論から
火災保険は法律で入る義務があるものではありません。それでも住宅ローンを組むなら、ほとんどの場合は融資の条件として加入が必要になります。
決めるのは「いつから補償を始めるか」「どこで入るか」「いくらで、何年で入るか」の3点です。順番に見ていけば、銀行の窓口で言われるまま契約する必要はなくなります。
この記事が扱う範囲
- 扱うのは住宅ローンを組むときの火災保険と地震保険の条件と選び方です
- 火災保険料の目安と諸費用の全体は住宅ローンの諸費用の内訳が本体です
- 完済したあとの抵当権の抹消は住宅ローンの一括返済と完済後にやることで扱っています
住宅ローンで火災保険が求められる理由
住宅ローンの火災保険とは、担保になる建物が火事や自然災害で壊れたときの損害に備える保険です。銀行は建物に抵当権を付けてお金を貸すので、建物がなくなると担保の価値も消えてしまいます。
買う側にも事情があります。家が焼けても住宅ローンの返済は残るので、建て直すお金を保険で用意しておかないと、住めない家のローンだけを払い続けることになりかねません。
もらい火でも隣の家に請求しにくい
隣の家から燃え移った火事でも、相手に損害を払ってもらえるとは限りません。失火責任法は、火事を出した人に重大な過失がない限り、民法709条の損害賠償の規定を適用しないと定めています。
つまり、自分の家は自分の火災保険で守る形になります。銀行が加入を求めるのは担保のためですが、住む側にとっても手放しにくい保険です。
金融機関ごとの条件(2026年10月時点)
火災保険を条件にするかどうか、どこまで求めるかは金融機関の決まりで変わります。公式の案内で確かめられた例を並べました。
火災保険の扱い(各金融機関の公式案内・2026年10月確認)
| 金融機関・商品 | 火災保険の扱い | 銀行で入る必要 |
|---|---|---|
| フラット35(楽天銀行の説明書) | 返済終了まで機構の要件を満たす保険に加入 | 記載なし |
| りそな銀行 | 何らかの火災保険への加入が必須 | 自行の専用保険は任意 |
| 三井住友信託銀行 | 自行の火災保険は借入の条件ではない | 不要 |
| ゆうちょ銀行(フラット35) | 損保2社の商品から自分で選べる | 任意 |
出所: 楽天銀行「【フラット35】商品詳細説明書」、りそな銀行「りそなの住宅ローン専用火災保険」、三井住友信託銀行「住宅ローン用火災保険」、ゆうちょ銀行「フラット35ご利用者様向け住宅ローン火災保険」。
三井住友信託銀行は「保険契約のお申し込みの有無により、当社との他のお取引に影響が及ぶことは一切ありません」と明記しています。銀行の保険に入らないと審査に響く、という心配は要りません。
火災保険はいつまでに入る?引き渡し日から補償を始める
火災保険は、引き渡しの日に補償が始まるように契約しておくのが基本です。民法567条は、売主が買主に引き渡したあとに、どちらのせいでもない理由で建物が壊れたら、買主は代金の支払いを拒めないと定めています。
引き渡しを受けた瞬間から、燃えたときの損は買主のものになります。融資が実行されて鍵を受け取る日に、保険がまだ始まっていない状態を作らないことが一番の目的です。
住宅購入の流れと火災保険の手続き
| 段階 | 火災保険でやること |
|---|---|
| 売買契約・本審査 | 見積もりを2社以上から取り始める |
| 金消契約 | 保険会社と補償の中身を決め、申し込む |
| 決済・引き渡し | この日を補償の始まり(保険始期)にする |
| 入居後 | 保険証券を保管し、更新の時期を控えておく |
出所: 引き渡し後の危険の移転はe-Gov法令検索「民法」第567条。金消契約の当日の流れは金銭消費貸借契約(金消契約)とはを参照。
火災保険の補償は、引き渡しの日から始める
- いつから補償を始める?
- 1売買契約・本審査のころ見積もりを集め、補償の中身を比べる
- 2金消契約のころ保険会社を決めて申し込む。証券の写しを求める銀行もある
- 3決済・引き渡しの日この日から燃えたときの損は買主の負担(民法567条)
- 4補償の始まりをこの日に合わせる保険のない日を1日も作らない
図:引き渡し後の危険は買主に移る(民法567条)ため、火災保険の始期を引き渡し日に合わせる。
「間に合わない」を防ぐには見積もりを早めに
「住宅ローン 火災保険 間に合わない」と調べる人は、引き渡しの直前に慌てていることが多いはずです。建物の構造や面積がわかる資料があれば見積もりは取れるので、本審査を申し込んだころから動けるはずです。
銀行によっては、手続きの中で火災保険証券の写しを求められます。ゆうちょ銀行のフラット35の申込書類一覧にも、借り換え物件の書類として「火災保険証券【写し】」が挙がっています。提出の期限は借入先によって違うので、金消契約の案内が届いた時点で確かめてください。
注文住宅とつなぎ融資では始期がずれる
注文住宅で建物が完成する前に土地代や着工金を払うときは、建物の引き渡しは完成のあとです。火災保険の始期も建物の引き渡しに合わせます。工事中の建物の保険は、建てる会社の側で入っているかを確かめておくと安心です。
つなぎ融資の流れはつなぎ融資とはで扱っています。
銀行が紹介する火災保険と自分で選ぶ火災保険
銀行が紹介する火災保険に入る義務はありません。火災保険を条件にしている銀行でも、保険会社は自分で選べるのが一般的です。
違いが出るのは保険料と手続きの手間です。銀行経由の団体扱いは割引がつく一方、選べる商品はその銀行が扱う数社に限られます。
銀行経由と自分で選ぶ場合の違い(2026年10月時点)
| 比べる点 | 銀行が紹介する保険 | 自分で選ぶ保険 |
|---|---|---|
| 保険料の割引 | 団体割引がつくことがある(りそなは10%) | 保険会社ごとの割引のみ |
| 選べる商品 | 銀行が扱う数社に限られる | どの保険会社でも選べる |
| 手続き | 住宅ローンと同じ窓口で済む | 保険会社と別に手続きする |
| 地震保険料の割引 | りそな・三井住友信託は団体割引の対象外 | 建築年・耐震の割引は同じ |
出所: りそな銀行(ローン団体割引10%・地震保険料は割引対象外)、三井住友信託銀行(地震保険には団体扱割引の適用なし)、ゆうちょ銀行(団体割引は損保ジャパンのみ・三井住友海上は対象外)。
同じ銀行の中でも、割引がつく保険会社とつかない保険会社があります。ゆうちょ銀行は2社を扱い、団体割引がつくのは損保ジャパンの契約だけです。銀行の見積もりと、自分で取った見積もりを同じ補償内容で並べると差が見えます。
保険料は住宅ローンに組み込める場合がある
フラット35では、火災保険料(積立型の商品を除く)と地震保険料が借入の対象に入っています。楽天銀行の商品詳細説明書は、登記費用や仲介手数料と並べてこの2つを挙げています(2026年10月確認)。
民間の銀行で諸費用まで借りられるかは、商品によって違うでしょう。借りれば手元の現金は残りますが、そのぶん利息がかかる点は頭に置いておきます。
保険金額と契約期間の決め方
保険金額は、同じ建物を建て直すのにかかる金額(再調達価額)を基準にするのが基本です。総務省消防庁の防災危機管理eカレッジは、再調達価額で契約すれば保険金だけで同等の建物を建てられると説明しています。
使った分を差し引いた「時価」で契約する方法もあり、時価を下回る金額だと損害額どおりに保険金が出ないことがあると、同じ資料は注意しています。
契約期間は最長5年、ローンより短い
損害保険料率算出機構は2021年5月の届出で、火災保険の参考純率を使える期間を最長10年から最長5年に短くしました。35年の住宅ローンなら、途中で何度も更新することになります。
フラット35は返済が終わるまで加入し続けることが条件です。更新の案内を見落として保険が切れると、条件を守れなくなるうえ、その間の火事は自己負担になります。
火災保険の参考純率の主な改定(損害保険料率算出機構)
| 届出 | 主な内容 |
|---|---|
| 2021年5月 | 全国平均で10.9%引き上げ・使える期間を最長5年に |
| 2023年6月 | 全国平均で13.0%引き上げ・水災の料率を地域のリスクで5区分に |
出所: 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」(2021年5月21日届出)、同(2023年6月21日届出)。参考純率は各保険会社が保険料を決めるときの目安で、実際の保険料は会社ごとに違います。
水災の補償は場所で判断する
2023年の改定で、水災の料率は地域ごとの水害リスクで5つに分かれました。川や低い土地の近くは水災の保険料が上がり、リスクの低い地域は下がる仕組みです。
水災の補償を外すと保険料は下がります。外すかどうかは、自治体のハザードマップで浸水の想定を見てから決めるのが筋です。損害保険料率算出機構は住所から水災等地を調べる「水災等地検索」も公開しています。
地震保険はつけるべきか
火災保険だけでは、地震が原因の火事や、地震で燃え広がった損害は補償されません。財務省の「地震保険制度の概要」はこう説明し、地震保険は火災保険とセットで入る仕組みだと説明しています。地震保険だけの単独契約はできません。
地震保険は、民間の保険会社が負う大きな地震の損害を政府が再保険する仕組みで成り立っています。保険料は建物の構造と所在地で決まり、迷うのは「つけるか」と「いくらにするか」の2つになります。
地震保険の金額の決まり(財務省・2026年10月確認)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険金額 | 火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で決める |
| 上限 | 建物5,000万円・家財1,000万円 |
| 途中加入 | 火災保険の契約期間の途中からでも入れる |
| 割引 | 建築年・耐震等級・免震・耐震診断で10%〜50%(重複不可) |
出所: 財務省「地震保険制度の概要」。
たとえば建物の火災保険を2,500万円にすると、地震保険は750万円〜1,250万円の範囲で選びます。地震保険だけで建て直す額には届かないので、生活を立て直すお金と考えるのが実態に合います。
地震保険料は所得税の控除がある
地震保険料は、所得税の地震保険料控除の対象です。国税庁のタックスアンサーNo.1145(令和8年4月1日現在法令)が控除額を示しています。年間の地震保険料が5万円以下なら全額、5万円を超えると一律5万円です。
財務省の同じページは、住民税でも最高2万5千円が控除されると説明しています。火災保険料の部分は控除の対象になりません。保険会社から届く控除証明書で、地震保険料の金額を確かめてください。
質権設定と完済後の火災保険
質権設定とは、火事で保険金が出たときに、その保険金を銀行が優先して受け取れるようにしておく手続きです。保険金は住宅ローンの返済に充てられる前提になっています。
フラット35では、借地などで敷地に抵当権を設定できない場合が対象です。保険金を受け取る権利に、住宅金融支援機構が質権を設定すると楽天銀行の説明書にあります。民間の銀行で質権を求めるかは、契約のときの書類で確かめてください。
完済したあとの火災保険、何をするか
- 住宅ローンを完済した
- 質権が付いている銀行に質権の解除を頼み、書類を保険会社へ出す
- 質権は付いていない保険会社への手続きは不要。契約はそのまま続く
- どちらでも補償の中身と金額を、ローンのない暮らしに合わせて見直す
図:完済で火災保険が自動で終わることはない。質権の有無で手続きが変わる。
完済しても保険は自動で終わらない
住宅ローンを完済しても、火災保険の契約はそのまま続きます。銀行が加入を求める理由はなくなりますが、家を守る保険としての役目は残ります。
完済のあとは、建物の金額や補償の範囲をあらためて見直す時期です。抵当権の抹消を含めた完済後の手続きは住宅ローンの一括返済と完済後にやることにまとめています。
よくある質問
Q1:住宅ローンを組むとき火災保険は必須ですか?
法律で決まった義務ではありませんが、多くの金融機関が融資の条件にしているのが実情です。フラット35は返済が終わるまで機構の要件を満たす火災保険に入ることが条件で、りそな銀行も何らかの火災保険への加入を必須としています。
Q2:火災保険はいつまでに入ればいいですか?
引き渡しの日に補償が始まるように、金消契約のころまでに申し込んでおくのが目安です。引き渡しのあとに建物が壊れた損は買主が負うと民法567条が定めています。銀行が融資の前に証券の写しを求めることもあるので、期限は借入先に確かめてください。
Q3:銀行がすすめる火災保険に入らないと審査に響きますか?
響きません。三井住友信託銀行は、保険の申し込みの有無が他の取引に影響することは一切ないと明記しています。銀行経由の団体割引と、自分で取った見積もりを同じ補償内容で比べて決めてかまいません。
Q4:火災保険料を住宅ローンに組み込めますか?
フラット35では、火災保険料(積立型を除く)と地震保険料が借入の対象に入っています。民間の銀行で組み込めるかは商品によって違うので、諸費用まで借りられるかを申し込み前に確かめてください。
Q5:住宅ローンを完済したら火災保険はどうなりますか?
自動では終わらず、契約はそのまま続きます。質権が付いていれば、銀行に解除を頼んで保険会社に書類を出します。完済のあとは、ローンのない暮らしに合わせて補償の中身を見直す時期です。
Q6:地震保険はいくらまでかけられますか?
火災保険の保険金額の30%〜50%の範囲で決め、建物は5,000万円・家財は1,000万円が上限です(財務省)。地震保険料は年5万円を上限に所得税の控除の対象になります(国税庁No.1145)。
参考にした一次資料
- 楽天銀行「【フラット35】商品詳細説明書」(返済終了まで機構の要件を満たす火災保険に加入・借地等の場合の質権設定・火災保険料と地震保険料が借入対象)
- りそな銀行「りそなの住宅ローン専用火災保険」(何らかの火災保険への加入が必須・ローン団体割引10%・地震保険料は割引対象外)
- 三井住友信託銀行「住宅ローン用火災保険」(自行の火災保険は借入条件ではない・他の取引への影響なし)
- ゆうちょ銀行「フラット35ご利用者様向け住宅ローン火災保険」(2社から選択・最長5年の長期一括払い・団体割引は損保ジャパンのみ)
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」2021年5月21日届出(平均10.9%引き上げ・最長10年を最長5年に)
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」2023年6月21日届出(平均13.0%引き上げ・水災料率を5区分に細分化)
- 財務省「地震保険制度の概要」(火災保険では地震による火災は補償されない・保険金額30%〜50%・上限・割引)
- 国税庁 No.1145「地震保険料控除」(令和8年4月1日現在法令・最高5万円)
- 総務省消防庁 防災危機管理eカレッジ「火災保険加入の際の注意点(2)」(再調達価額と時価)
- e-Gov法令検索「民法」(第567条 目的物の滅失等についての危険の移転)
- e-Gov法令検索「失火ノ責任ニ関スル法律」(重大な過失がない失火には民法709条を適用しない)
まとめ:火災保険は引き渡しの日から、切らさずに
住宅ローンの火災保険は、多くの金融機関で融資の条件です。補償は引き渡しの日から始め、契約期間は最長5年なので更新のたびに切らさないようにします。
保険会社は自分で選べます。銀行経由の団体割引と自分で取った見積もりを同じ補償で比べ、水災の補償はハザードマップを見てから決めてください。保険料を含めた家計の組み立てに迷うなら、無料で相談できる窓口の選び方も参考になります。
この記事のまとめ
- 火災保険は法律の義務ではないが、多くの金融機関で融資の条件
- フラット35は返済終了まで、機構の要件を満たす保険への加入が条件
- 補償は引き渡しの日から始める(引き渡し後の損は買主の負担・民法567条)
- 銀行が紹介する保険に入る義務はなく、入らなくても審査に響かない
- 保険金額は再調達価額が基準、契約期間は最長5年で更新が要る
- 地震保険は火災保険の30%〜50%で、保険料は年5万円まで控除の対象
免責事項
※本記事は、民法・失火責任法の条文と、各金融機関・財務省・国税庁・損害保険料率算出機構・総務省消防庁の公開情報をもとにした整理です(2026年10月時点)。火災保険の加入条件は借入先の金融機関、補償の内容と保険料は保険会社の契約によって異なります。契約の前に、借入先と保険会社の案内をご確認ください。
