住宅ローンの審査に落ちても、売買契約にローン特約があれば契約は白紙に戻り、払った手付金は返ってきます。返ってこないのは、自己都合で解約したときや、特約の期日を過ぎたとき。売主が不動産会社なら、手付金は代金の2割までと法律で決まっています。
この記事でわかること
- 手付金とは何か、住宅ローンとの関係
- 審査に落ちたときに手付金が返ってくる場合・返ってこない場合
- ローン特約で契約前に確かめる4項目
- 手付金の上限(代金の2割)と、売主が倒産したときの保全
一次資料: 不動産適正取引推進機構「ローン特約・買換え特約」(参照)/e-Gov法令検索「民法」(参照)/e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(参照)
先に結論から
手付金が返ってくるかは、売買契約書にローン特約があるかでほぼ決まります。特約があり、期日までに融資の承認が出なければ、契約は白紙に戻って手付金は返金されます。
特約がない契約や、自分の都合でやめる場合は話が変わります。手付金を放棄して解約する形になり、払ったお金は戻りません。
この記事が扱う範囲
- 扱うのは売買契約のときに払う手付金と、審査に落ちたときの扱いです
- 事前審査と本審査の違いは住宅ローンの事前審査と本審査の違いが本体です
- 融資が決まったあとの契約は金銭消費貸借契約(金消契約)とはで扱っています
手付金とは何か、住宅ローンとの関係
手付金とは、住宅の売買契約を結ぶときに買主が売主へ払うお金です。民法557条は、売主が契約の履行に着手するまでなら、買主は手付金を放棄して契約を解除できると定めています。
売主の側も、手付金の倍額を買主に払えば解除できます。手付金は「この契約を守る」という約束の証拠で、同時に、やめるときの値段にもなるお金です。
住宅購入の流れと、手付金・住宅ローンのお金が動く時点
| 段階 | 買主がすること | 動くお金 |
|---|---|---|
| 事前審査 | 銀行に仮の申し込み | なし |
| 売買契約 | 契約書に署名し、ローン特約を確かめる | 手付金(自己資金) |
| 本審査 | 銀行に正式に申し込む | なし |
| 金消契約 | 銀行と借入の契約を結ぶ | なし |
| 決済・引き渡し | 残代金を払い、鍵を受け取る | 住宅ローンの融資+自己資金 |
出所: 手付金の性質はe-Gov法令検索「民法」第557条。融資の実行が決済の日になる流れは金消契約の解説を参照。
手付金は自己資金で用意する
住宅ローンの融資が実行されるのは、残代金を払う決済の日です。売買契約の時点ではまだお金が借りられていないので、手付金は預貯金などの自己資金から払うことになります。
「住宅ローン 手付金 借りる」と調べる人もいます。手付金を別のローンで借りると、その返済も審査で見られる借入に加わります。他の借り入れと審査の関係は住宅ローン審査の全体像で確かめてください。
売主が不動産会社なら手付金は代金の2割まで
宅地建物取引業法39条は、不動産会社が自ら売主になるとき、代金の10分の2を超える手付金を受け取れないと定めています。4,000万円の住宅なら、手付金の上限は800万円です。
同じ条文の2項で、こうした手付金は解約手付の性質を持つとされます。不動産会社が売主の物件で手付金の額を提示されたら、2割の上限を超えていないかを見ておきます。
審査に落ちたときに手付金が返ってくる場合・返ってこない場合
審査に落ちて手付金が返ってくるのは、ローン特約の条件どおりに融資が承認されなかったときです。不動産適正取引推進機構は、特約による解除なら手付解除や契約違反の解除は適用されず、払った手付金は買主に返還されると説明しています。
手付金が返ってくるか(場面別・2026年10月時点)
| 場面 | 手付金 | 根拠 |
|---|---|---|
| ローン特約があり、期日までに融資の承認が出なかった | 返ってくる | 不動産適正取引推進機構 |
| 事前審査は通ったが、本審査で否決された(特約の期日内) | 特約の「承認」が本審査を指すなら返ってくる | 契約書の特約の文言 |
| 住宅ローンの手続きを怠った・申し込まなかった | 特約があっても解除できないことがある | 不動産ジャパン |
| ローン特約の期日を過ぎてから否決された | 特約で解除できず、手付解除になることがある | 特約の期日の定め |
| 自分の都合で購入をやめた | 返ってこない(手付金の放棄) | 民法557条 |
| 売主の都合で契約が解除された | 倍額が払われる | 民法557条 |
出所: 不動産適正取引推進機構「ローン特約・買換え特約」、不動産ジャパン「トラブル事例集:買うときのトラブル」、e-Gov法令検索「民法」第557条。
審査に落ちたとき、手付金が返ってくるかの分かれ目
- 住宅ローンの審査に落ちた
- 1契約書にローン特約がある?ない→手付金を放棄して解約する形になりやすい
- 2特約の期日の内か?期日を過ぎていると特約で解除できないことがある
- 3特約に書いた銀行・金額で申し込んだか?手続きを怠ったと見られると解除できないことがある
- 43つとも満たす契約は白紙に戻り、払った手付金は返ってくる
図:不動産適正取引推進機構「ローン特約・買換え特約」と不動産ジャパンのトラブル事例から整理。
手続きを怠ると特約があっても守られない
不動産ジャパンは、買主が住宅ローンの手続きを怠るなど落ち度がある場合、ローン特約があっても契約を解除できない可能性があると注意しています。特約は「まじめに申し込んだのに承認が出なかった」ときのための約束です。
本審査の書類は期日から逆算して早めに出し、銀行から追加の書類を求められたらすぐ応じます。必要な書類の一覧は住宅ローン審査の必要書類にまとめています。
「払えない」ときは契約の前に相談する
「住宅ローン 手付金 払えない」と探す人の多くは、自己資金が足りない場面でしょう。手付金の額は売買契約で決めるものなので、署名の前なら売主や仲介の不動産会社と金額を相談できます。
署名したあとに払えないと、契約の履行の問題になります。手付金と諸費用を払ったあとに手元にいくら残るかを、契約の前に数えておくと安心です。
ローン特約で契約前に確かめる4項目
不動産適正取引推進機構は、ローン特約を付けるときは融資を申し込む金融機関・融資金額・承認までの期間・承認されなかったときの対応を明確にするよう注意しています。この4つが曖昧だと、落ちたときに解除できるかで揉めやすくなります。
契約書のローン特約で確かめること
- 融資を申し込む金融機関の名前(「等」で広く書かれていないか)
- 融資金額(借りる予定の額と一致しているか)
- 融資が承認されるまでの期日(本審査に足りる日数か)
- 承認されなかったときの扱い(自動で白紙になるか、解除の通知が要るか)
出所: 不動産適正取引推進機構「ローン特約・買換え特約」(融資申込金融機関・融資金額・承認までの期間・承認されなかった場合の対応策を明確に)。
承認されなかったときの扱いは、自動で契約がなくなる「解除条件」型と、買主が解除を申し出る「解除権の留保」型に分かれます。後者なら、期日までに解除の意思を書面で伝える必要があるかを仲介の不動産会社に確かめておきます。
期日は本審査の日数から逆算する
本審査には書類の準備から承認まで日数がかかります。特約の期日が短すぎると、承認が出る前に期日を迎えてしまいかねません。事前審査と本審査の進み方は事前審査と本審査の違いを参考に、銀行に目安の日数を聞いてから期日を決めてください。
売主が倒産したときの手付金の保全
売主の不動産会社が引き渡しの前に倒産すると、手付金が戻らないおそれがあります。宅地建物取引業法41条は、工事完了前の物件で一定額を超える手付金等を受け取るとき、不動産会社に保全措置を義務づけています。
不動産ジャパンは、保全されている場合は保証証書や保険証券が買主に渡されると説明しています。不動産会社が売主の物件では、受け取る書類の中にこれがあるかを確かめます。
売主別の手付金の決まり(2026年10月時点)
| 売主 | 手付金の上限 | 倒産などへの備え |
|---|---|---|
| 不動産会社(宅地建物取引業者) | 代金の2割まで(宅建業法39条) | 一定額を超えると保全措置が義務(宅建業法41条ほか) |
| 個人 | 法律の上限なし(契約で決める) | 保全措置の義務なし |
出所: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第39条・第41条、不動産ジャパン「トラブル事例集:買うときのトラブル」。
よくある質問
Q1:住宅ローンの審査に落ちたら手付金は返ってきますか?
売買契約にローン特約があり、その条件どおりに融資の承認が出なかったなら返ってきます。不動産適正取引推進機構は、特約による解除では払った手付金が買主に返還されると説明しています。特約がない契約では、手付金を放棄して解約する形になりやすいので注意が要ります。
Q2:手付金が返ってこないのはどんなときですか?
自分の都合で購入をやめたときは、手付金を放棄して解約することになります(民法557条)。ローン特約の期日を過ぎてから否決されたときや、住宅ローンの手続きを怠ったと見られるときも、特約で解除できず手付金が戻らないことがあります。
Q3:手付金はいくら払うものですか?
金額は売買契約で決めます。売主が不動産会社なら、代金の10分の2を超える手付金は受け取れないと宅地建物取引業法39条が定めています。4,000万円の住宅なら上限は800万円です。個人が売主の物件には、この上限はありません。
Q4:手付金を住宅ローンで借りることはできますか?
住宅ローンの融資は決済の日に実行されるので、売買契約のときに払う手付金には間に合いません。手付金は自己資金で用意するのが基本です。別のローンで借りると、その返済も住宅ローンの審査で見られる借入に加わります。
Q5:事前審査に通ったのに本審査で落ちたら手付金はどうなりますか?
ローン特約の期日内に本審査で承認が出なければ、特約の条件どおりなら手付金は返ってきます。事前審査の承認は融資の承認そのものではありません。特約の「承認」が本審査の承認を指しているかを、契約書の文言で確かめてください。
参考にした一次資料
- e-Gov法令検索「民法」(第557条 手付=相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して解除できる)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第39条 代金の額の10分の2を超える手付の受領の禁止・解約手付の性質/第41条 手付金等の保全)
- 不動産適正取引推進機構「ローン特約・買換え特約」(白紙解除・手付金の返還・特約に明確にする4項目)
- 不動産ジャパン「トラブル事例集:買うときのトラブル」(特約の記載の確認・手続きを怠ると解除できない可能性・保全措置の保証証書)
まとめ:手付金はローン特約の中身で守られる
住宅ローンの審査に落ちても、ローン特約があり条件どおりなら、契約は白紙に戻り手付金は返ってきます。自己都合の解約や、特約の期日を過ぎた否決では戻らないことがあります。
署名の前に、特約の金融機関・金額・期日・承認されなかったときの扱いの4つを確かめてください。手付金と諸費用を払ったあとの家計に不安があるなら、無料で相談できる窓口の選び方も参考になります。
この記事のまとめ
- 手付金は売買契約のときに払い、自己資金で用意する
- ローン特約があり、期日までに融資が承認されなければ手付金は返ってくる
- 自己都合の解約は手付金の放棄(民法557条)
- 手続きを怠ると、特約があっても解除できないことがある
- 売主が不動産会社なら手付金は代金の2割まで(宅建業法39条)
- 特約は金融機関・金額・期日・承認されなかったときの扱いの4つを確かめる
免責事項
※本記事は、民法・宅地建物取引業法の条文と、不動産適正取引推進機構・不動産ジャパンの公開情報をもとにした整理です(2026年10月時点)。手付金の扱いは個々の売買契約書の定めによって異なります。契約の前に、契約書の内容を仲介の不動産会社にご確認ください。
