ペアローン繰上返済は、金利が高く住宅ローン控除の残高が少ない側の契約から返すのが基本です。ただし各自が自分の資金で自分の債務を返すのが原則で、配偶者の資金で相手の債務を返すと年間110万円超は贈与税の対象になります(国税庁タックスアンサー・2026年時点)。
この記事でわかること
- ペアローンの繰上返済をどちらの契約から返すかを、金利・控除残高・団信の4軸で選ぶ順番
- 夫婦間で資金を動かして返すと贈与税がかかるケースと、かからないケースの判定
- 繰上返済が住宅ローン控除(年末残高×0.7%)に与える影響と、控除中に急いで返さない考え方
- 一部繰上・全額繰上・連生団信で変わる団信保障の残り方
- 期間短縮型と返済額軽減型の選び方と、ペアローンでよくある失敗
公的情報源: 国税庁タックスアンサー No.4402・No.4452(参照)/国税庁「住宅借入金等特別控除」No.1213(参照)
繰上返済の前に、いまの金利が借り換えで下げられないか確認しておくと判断が変わります。
結論を先に書きます
ペアローンの繰上返済で迷ったら、金利が高く、住宅ローン控除の残高が少ない側の契約から返すのが基本の順番です。利息の削減幅が大きく、控除で取り戻せる額が少ない側から返すほど、家計への効果が大きくなります。
ただし前提として、各自が自分の口座の資金で、自分名義の債務を返すのが原則です。配偶者の資金で相手の債務を肩代わりすると、年間110万円を超えた分は贈与税の対象になります(国税庁タックスアンサー No.4402・2026年時点)。
- ペアローンは2本の独立した契約。繰上返済は契約ごと・原資ごとに考える
- 返す順番は①金利が高い側 ②控除残高が少ない側 ③稼ぎ頭の団信は残すの優先で判断
- 贈与税は「誰の資金で・誰の債務を返したか」で決まる。自分の資金で自分の債務なら非課税
- 控除期間中(残高×0.7%)は、急いで返すと控除の取り分を減らすことがある
ペアローンの繰上返済とは|2本の契約を別々に返す仕組み
ペアローンの繰上返済とは、夫婦それぞれが組んだ2本の住宅ローンについて、毎月の返済とは別に、まとまった資金で元金の一部または全部を前倒しで返すことです。
ポイントは、ペアローンが「1つの住宅に対して2本の独立した契約」である点です。夫の契約と妻の契約は借入額も金利も残高も別々で、繰上返済も片方だけ・両方・金額もそれぞれ自由に選べます。
だからこそ「どちらから返すか」「いくら返すか」で、利息削減・控除・団信の結果が変わります。1本の住宅ローンにはない、ペアローン特有の設計判断が必要になります。
繰上返済そのものの効果やタイミングの基礎は、住宅ローンの繰上返済の効果とタイミングで整理しています。まずは単独ローンの考え方を押さえたうえで、本記事のペアローン特有の論点を読むと理解が早くなります。
ペアローンの繰上返済はどちらから返すべきか|4つの判断軸
結論は、利息削減の効果が大きく、控除で取り戻せる額が少ない側から返すです。ここに団信と年収の観点を重ねて、最終的な順番を決めます。
目的が「利息削減」か「控除維持」か「団信の保全」かで、先に返す契約は変わります。

- 金利が高い側から返す(利息削減)
- 控除残高が少ない側から返す(控除維持)
- 稼ぎ頭の団信は残す(保障の保全)
- 持分割合と返済額をそろえる(贈与税回避)
軸1:金利が高い側から返す
繰上返済で減らせる利息は、金利が高いローンほど大きくなります。夫婦で金利タイプや適用金利が違うなら、まず高い側から返すのが利息削減では有利です。
たとえば夫が固定1.8%・妻が変動0.5%なら、同じ100万円でも夫側を返したほうが将来の利息削減額は大きいという考え方になります。
軸2:住宅ローン控除の残高が少ない側から返す
住宅ローン控除は、年末残高に応じて所得税・住民税が戻る制度です。残高を減らすほど、翌年以降に戻る控除額も減ります。
そのため控除期間中は、控除で取り戻せる額が少ない側(残高が小さい・控除枠を使い切っている側)から返すと、控除のメリットを保ちやすくなります。詳しくは後の章で扱います。
軸3:稼ぎ頭の団信は残す
繰上返済で片方のローンを完済すると、その人の団体信用生命保険(団信)は終了します。万一のとき残る保障が減るという副作用があります。
収入の柱になっている側の団信は、急いで消さないほうが安心です。団信の考え方は団信の章で詳しく整理します。
軸4:持分割合と返済額をそろえる
登記の持分割合と、実際に返した金額が大きくずれると、贈与税の論点が出ます。自分の持分・自分の債務に対応する範囲で返すのが、税務上いちばんシンプルです。
無料のFP相談で家計全体から返す順番を確認すると、控除・団信・老後資金まで含めた優先順位を整理しやすくなります。
ペアローンの繰上返済と贈与税|夫婦間の資金移動に注意
ペアローンの繰上返済でいちばん見落とされやすいのが、夫婦間の資金移動による贈与税です。
繰上返済で贈与税がかかるかどうかは、返済に使ったお金が「誰の資金か」で決まります。

自分の給与や預貯金で、自分名義の債務を返すなら、金額がいくらでも贈与税はかかりません。問題になるのは、配偶者の資金で相手名義の債務を返したときです。
贈与税がかかる主なケース
夫婦間でも、次のように「一方の資金で他方の債務を返す」構図になると、贈与とみなされます。
- 妻が専業主婦になり、夫の資金で妻名義のローンを繰上返済した
- 一方が、自分の持分割合を超えて相手のローンまで返した
- 片方の口座から相手名義の返済口座へ、まとまった額を移して返した
国税庁タックスアンサー No.4402(2026年時点)では、贈与税の基礎控除は年間110万円です。夫婦間でも、この枠を超えて資金を渡して返済に充てると、超えた分が課税対象になります。
贈与税を避ける・軽くする方法
対策の基本は、資金の出どころと債務の名義をそろえることです。難しい場合は次の選択肢があります。
| 方法 | 内容 | 主な条件・注意点 |
|---|---|---|
| 年110万円の基礎控除内で渡す | 暦年贈与の範囲で資金移動 | 毎年同額の定期贈与と見られない工夫が必要 |
| 夫婦間贈与の配偶者控除 | 居住用不動産等で最高2,000万円まで非課税 | 婚姻20年超などの要件(No.4452) |
| 借入として返す | 贈与でなく貸付にする | 金銭消費貸借契約書・返済実態が必要 |
婚姻期間20年を超える夫婦には、居住用不動産の贈与に使える配偶者控除があります。基礎控除110万円に加えて最高2,000万円まで非課税にできます(国税庁タックスアンサー No.4452・2026年時点)。
夫婦間の繰上返済と贈与税の具体例は、妻の貯金で繰り上げ返済すると贈与税になる?回避策でさらに詳しく扱っています。
贈与税の判断は金額と名義で変わります。返す前に一度、専門家に確認しておくと安心です。
ペアローンの繰上返済と住宅ローン控除|急いで返さない考え方
繰上返済は利息を減らす一方で、住宅ローン控除の取り分を減らすことがあります。
国税庁「住宅借入金等特別控除」No.1213(2026年時点)では、控除額は年末残高×0.7%です。残高を前倒しで減らすほど、その年以降に戻る控除も小さくなります。
つまり控除期間の前半は、控除で戻る額と、繰上返済で減る利息を天秤にかける必要があります。金利が控除率0.7%を下回る低金利のローンなら、控除期間が終わるまで返済を待つ判断も合理的です。
ペアローンでは夫婦それぞれに控除枠があるため、控除を使い切れていない側を先に減らさないのが基本です。控除の取り分が少ない側から返すと、世帯全体で受け取る控除を保ちやすくなります。
期間短縮型と返済額軽減型の選び方
繰上返済には、返済期間を縮める「期間短縮型」と、毎月の返済額を下げる「返済額軽減型」があります。
| 種類 | 効果 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 期間短縮型 | 利息削減が大きい | 総返済額を減らしたい・完済を早めたい |
| 返済額軽減型 | 毎月の負担が軽くなる | 教育費や収入減に備えたい・家計の余裕を作りたい |
利息削減だけなら期間短縮型が有利ですが、ペアローンは片方の収入減リスクがあるため、返済額軽減型で毎月の負担を下げる選択も検討に値します。どちらが向くかは家計全体で判断します。
ペアローンの繰上返済と団信|完済すると保障が消える
繰上返済で片方のローンを完済すると、その契約の団信は役目を終えます。保障が消える点を見落とさないのが大切です。
団信の観点では、繰上返済のやり方で保障の残り方が3通りに分かれます。

- 一部繰上返済:残高が減っても契約は続くため、団信は維持されます
- 全額繰上返済(完済):契約終了とともに、その人の団信も終了します
- 連生団信:夫婦どちらかに万一があれば、両方の残高がまとめて保障されます
とくに収入の柱になっている側を全額繰上返済で完済すると、その人に万一のことがあったときに残る保障が薄くなります。稼ぎ頭のローンは、団信を残す意味でも急いで完済しないほうが安心なケースが多いです。
一方で連生団信に加入していれば、片方を完済しても残った契約で夫婦分をカバーできる設計もあります。加入している団信の種類は、繰上返済の前に確認しておきましょう。団信の保障範囲は住宅ローンの団信の種類と保障範囲の比較で整理しています。
ペアローンの繰上返済でよくある失敗と回避策
ペアローンの繰上返済でつまずきやすいのは、「利息削減だけ」で判断してしまうケースです。控除・団信・贈与税を見落とすと、あとで損をすることがあります。
- 控除期間中に急いで返して控除を減らす:低金利なら控除終了まで待つ判断も検討する
- 配偶者の資金で相手の債務を返して贈与税になる:資金の出どころと名義をそろえる
- 稼ぎ頭のローンを完済して団信を消す:保障の必要額を確認してから完済する
- 手数料や金利タイプを確認せず返す:一部繰上の手数料や、変動・固定の別を確認する
回避の型はシンプルで、「利息・控除・団信・贈与税」の4点を、返す前にひととおり確認することです。判断に迷ったら、家計全体を見られるFP相談で優先順位を整理すると失敗を防ぎやすくなります。
よくある質問
ペアローンの繰上返済について、読者から多い質問を整理します。
Q1:ペアローンの繰上返済はどちらから返すのが得ですか?
金利が高く、住宅ローン控除の残高が少ない側の契約から返すのが基本です。利息の削減幅が大きく、控除で取り戻せる額が少ない側から返すほど家計への効果が大きくなります。ただし収入の柱になっている側の団信は残す配慮も必要で、利息・控除・団信の3点を合わせて判断します。
Q2:夫の資金で妻のローンを繰り上げ返済すると贈与税がかかりますか?
年間110万円を超える部分は贈与税の対象になります。自分の資金で自分名義の債務を返すなら非課税です。配偶者の資金で相手の債務を返すと贈与とみなされます(国税庁タックスアンサー No.4402・2026年時点)。資金の出どころと債務の名義をそろえるのが基本の対策です。
Q3:繰上返済すると住宅ローン控除は減りますか?
減る場合があります。控除額は年末残高×0.7%のため、残高を前倒しで減らすと翌年以降の控除も小さくなります(国税庁 No.1213・2026年時点)。金利が0.7%を下回る低金利なら、控除期間の終了を待ってから返す判断も合理的です。
Q4:ペアローンの片方を全額繰上返済すると団信はどうなりますか?
完済した契約の団信は終了します。その人に万一のことがあったときに残る保障が減るため、収入の柱になっている側の完済は慎重に判断します。連生団信に加入していれば、残った契約で夫婦分をカバーできる設計もあります。
Q5:期間短縮型と返済額軽減型はどちらを選ぶべきですか?
利息削減を最優先するなら期間短縮型が有利です。ただしペアローンは片方の収入減リスクがあるため、毎月の負担を下げる返済額軽減型も選択肢になります。教育費や収入減に備えたいなら軽減型、完済を早めたいなら短縮型と、家計全体で選び分けます。
Q6:繰上返済に手数料はかかりますか?
金融機関や返済方法によって異なります。ネット手続きの一部繰上返済は無料の銀行が多い一方、窓口や全額繰上返済で手数料がかかる場合があります。ペアローンは2契約分の手数料がかかるため、返す前に各契約の条件を確認しておきましょう。
まとめ:ペアローンの繰上返済は順番と原資で決める
ペアローンの繰上返済は、契約ごと・原資ごとに考えるのが基本です。最後に要点を整理します。
- 返す順番の優先は①金利が高い側 ②控除残高が少ない側 ③稼ぎ頭の団信は残す
- 自分の資金で自分名義の債務を返すなら、金額に関係なく贈与税はかからない
- 配偶者の資金で相手の債務を返すと、年間110万円超は贈与税の対象(国税庁 No.4402)
- 控除期間中は、年末残高×0.7%の取り分を減らさないよう急いで返さない
- 全額繰上返済は団信が消えるため、稼ぎ頭の完済は慎重に判断する
ペアローンの繰上返済は、利息・控除・団信・贈与税の4点をそろえて判断すれば、大きな失敗は避けられます。返す前に一度、家計全体で優先順位を確認しておくのが、いちばん確実な進め方です。
控除・団信・贈与税まで含めて「どちらからいくら返すか」を整理したいなら、家計全体を見られる無料相談で確認しておくと安心です。金利の見直し余地もあわせてチェックできます。
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免責事項
※本記事は住宅ローン・税制の公開情報をもとにした一般的な整理です。金利・団信の保障内容・手数料は各金融機関、贈与税・住宅ローン控除の取り扱いは国税庁の最新情報をご確認ください。個別の税額や返済計画の判断は、税理士・ファイナンシャルプランナーなど有資格の専門家へご相談ください。
